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みなさん さようなら

2019.02.18 05:42|「周作閑話」
1991年(S3)月刊「NewTRUCK」2月号

食糧も腐ってしまう
大谷 健 (元朝日新聞編集委員)

 ソ連はひどい食糧難という。モスクワの国営食料品店の棚には何もないという。ヨーロッパをはじめ、アメリカからも食糧やそれを買うお金を送ってくる。あのイラクまでがナツメヤシの実を贈ると言い出し、さすがソ連政府もこれだけはことわった。
 ヨーロッパ、とくにドイツはソ連侵攻に備えて西ベルリンに貯蔵の非常用食糧を提供している。食糧不足でどうにもならなくなってソ連から難民が流出してくるのをヨーロッパの人は本気で心配しているとのことだ。

 ただ不思議なことに、一方でソ連は昨年は豊作だったのである。昨年の穀物生産は2億3500万トンと推定されるが、これは過去最高の1978年に迫る数字である。なのになぜ食糧難なのか。
 ソ連の中央集権的集荷システムが、共産党の権威失墜とともにうまく作用しなくなり、中途半端な市場経済の導入がかえって流通の混乱を招いているのである。
 だからといって元の社会主義制度の方がいいというわけにはいかない。というのは、もともと農産物が農場や流通過程で腐ってしまう例が多かったのである。

 ソ連では農産物の3分の1が市場に出回るまでに消えてしまうと言われる。原因は保管倉庫の不備による腐敗、輸送手段の不足による持ち腐れ、道路の不備による落ちこぼれ、闇ルートへの横流し等々である。
 だから世界が飢えに苦しむソ連人に食糧品をどっさり送ったつもりが、肝心の腹のすいたロシア人の口に入らぬ恐れがある。現にこんな情報がある。モスクワ市の地区検察当局がドイツからの食肉が腐って異臭を放っているのを見つけ、ソ連国内での輸送・管理に問題があったとして調査に乗り出したという。

 援助食糧が港や駅に放置されたままというケースが多く伝えられている。検察当局が調査に乗り出すといっても、果たしてどんな効果があるのか、そもそもちゃんとした物流システムが社会主義の下で育たなかったのだ。
 日本でも郵便局、国鉄の国営事業の下で、小包輸送が不活発だったのが、民営企業による宅配便の参入で小口輸送全体が活発化したのを目の当たりにしている。ソ連は物流のペレストロイカを断行しなくてはならないのだ。

 欧米が一生懸命、ソ連に食糧援助するものだから、お金持ちの日本も援助しなければならなくなった。ソ連の冬は寒い。その中でお腹を空かしているのは耐え難いだろう。応急措置として食糧を送るのは当然だろう。だがそれが港や駅で腐ってしまったり、いつの間にか闇市場で売られていたというのでは、何ともばかばかしい。

 急場の措置が終われば、日本はソ連に対して、もっと物流の何たるかを教える必要がある、幸いソ連政府もそのことはわかっているらしい。昨年秋に来日したシュワルナゼ外相が日本政府に物流調査団の派遣を要請し、今年1月、運輸省、JR貨物、JR東日本、日通、日本航空、日本倉庫協会などの専門家がソ連に出かけた。
 いまソ連や東欧各国に本当に必要なのは、目先の救援対策以上に、早く市場経済システムを覚えて貰うことだ。つまり援助でなく、自立への方法を体得してもらうことだ。日本から出かけてもいい。ソ連から来て貰ってもよい。ともかくソ連の物流を革命して貰いたいというのが、日本だけでなく、世界の願いであろう。


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みなさん さようなら

2005年3.月5日

誇るべき歴史がなかった?
唯一社史のない大手私鉄の西武

 私鉄の雄「西武」に君臨していた堤義明氏が逮捕された。かつて、世界一の資産家とも外国経済誌に紹介されていたし、スポーツでも有名人であっただけに、海外での反響も大きいようだ。 マスコミは、義明氏の父故康次郎氏を西武の創業者として紹介しているが、不動産の取得などで大きく発展させた業績はあっても、創業者ではないという。

 大手の企業には大体社史があるものだが、唯一の例外が今問題になっている私鉄の西武だそうである。社史がないからだろうか、堤義明氏の父である康次郎は西武の創業者ではないのに、マスコミだけでなく、人名辞典には創業者であると明示されている。(コンサイス人名辞典など)

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みなさん さようなら

2005年2月5日
君臣一如で「徳」の涵養(かんよう)に努めた明治天皇と乃木大将

 福田和也氏の近著『乃木希典』(文芸春秋社刊)は、その徳の面から乃木を論じたもので、明治天皇があれほど乃木を愛し信頼されたのも、ご自身が「君徳」を身に付けるために大変な努力を重ねておられていたことを、乃木のそれと重ね合わせておられたからであると指摘している。

 明治時代は、江戸時代と違って、欽定憲法のもとに文武の全権が天皇に集中する制度が確立した時期であった。天皇はすべて前面に出なければならないから、万世一系の天子という血筋だけで、雲の上に君臨することは許されなかった。現在と違って、天皇はこうであらねばならないとする硬骨の臣下が多くいて、若い明治天皇を鍛えたのである。天皇が落馬して、「痛い」と悲鳴を上げた時、西郷隆盛から「男子は『痛い』などとはいいもうさん」と一喝されて以来、天皇は「痛い」と言われなかったと福田著書にある。

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みなさん さようなら

201年1月25日
待ったなしの財政改革は「人間の生き方」を考える

 国の財政赤字は、お札をバンバン印刷すれば解決する、という単純なものではない。少子高齢化が急速に進む日本として、根本的な財政策を確立しなければならないのは当然で、思い切った与謝野薫経済財政担当相の起用の狙いも、目的はその一点である。
 ただ、これまで政権党が「福祉サービス優先」などと甘言ばかり並べてきたので、福祉面にも一気に大きな負担も必要であると納得させるのは難しいが、背に腹は代えられない事態が、すぐそこまで来ている。消費税増税が先ず、財政再建の一歩となるだろう。

 年金制度の改革も避けて通れない。団塊世代が65歳に達しかけている現状では、支給開始延期、定年延長なども早急に着手しなければならない。要するに「待ったなし」だ。
 こうなると、「人間の生き方」について、国も自治体も企業、そして個人も真剣に考え、取り組むことが、一番必要な課題であると思う。

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みなさん さようなら

2019.02.04 06:38|「周作閑話」
1985年(S60)月刊「NewTRUCK」3月号
周作閑話

クーデター

 「なぜだ」の迷セリフを残して三越の前社長岡田茂氏が社長の座を追われた事件はまだ記憶に新しい。このドラマチックな解任劇とそっくりの先例が20年余り前にあった。

 繊維の名門でトップメーカーの鐘紡の武藤絲治社長が昭和35年に役員全員の決議によって代表権のない会長に棚上げされたのがそれである。一介の宣伝担当のサラリーマンから社長の座に昇りつめた岡田氏とは違って、武藤絲治の父山治は、ジャーナリストから大鐘紡の社長になって国会に出たり、大正期から昭和初期にかけてスケールの大きな活躍をした人で、絲治も当然のことのように鐘紡に入り44歳で社長就任、長くワンマン体制を敷いた。山治、絲治の父子は鐘紡のいわば顔のような存在であり、その絲治を追放したのだから当然大きな話題になった。

 先月号の「1冊の本」で「毎日が日曜日」などの著作がある城山三郎について紹介したが、その企業小説のなかに「役員室午後3時」というのがある。華王紡という名前を借りてはいるものの明らかに鐘紡をモデルにしたもので、社長の藤堂は伝え聞く武藤絲治を髣髴(ほうふつ)させる風貌の持主であり、絲治を追放する黒幕でやがて社長に就任する矢吹は伊藤淳二前社長(現会長)が下敷きになっている。                                                                                                                     

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プロフィール

増田周作

Author:増田周作
(株)日新出版 創業者
月刊「特装車」「特装車とトレーラ」「NewTRUCK」編集発行人
「東京トラックショー」創立・主催者

大正15年8月30日生まれ 土佐出身
(H23年すい臓ガン、翌年肝臓ガン発病)
平成24年11月21日 肝不全で死去
       享年87歳

旧制中学1年1学期、上級生とのケンカで先方2名と共に退学処分。
15歳で安岡正篤先生門下に入る。
大阪商科大学(現・大阪市立大学経済学部)卒業。土木従事、新聞社を脱サラ後、広告代理店経営。昭和44年43歳、東京でトラックの月刊誌発行を始める。
湯島聖堂「斯文会」名誉会員・後援会常任委員を務める。
「呉越会」「東京トラックショー」「増田周作のおはようコラム」「日新論語会」など、常に社会の木鐸(ぼくたく)でありたいと願った“いごっそう”であった。
伊与田覚学監は10歳年上の叔父。

【 これがほんとうのあとがき。43年のもの書きの、最後の後書になった。われながらよく書き続けたものだと思う。
「生涯現役」。もの書きとして生涯現役を貫いた喜び、これに勝るものはない。読者の皆様に最後の「わだち」をお送りしてお別れをしたい。今、私は至福の感をもって最後のわだちを書いている。
 みなさん さようなら  11月13日 】
絶筆 H24年/12月号
「わだち=月刊 NewTRUCK 編集後記」

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