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みなさん さようなら

2018.09.27 04:25|「今月の論語」
1991年(H3)月刊「NewTRUCK」10月号
今月の論語

何の為の社会主義

 ソ連、社会主義陣営の総本山ともいうべきソ連共産党の解党にまで発展して、今後どうなるのか予断を許さない現状である。
 粛正に次ぐ粛正で幾百万ともいわれる人達を消し去ったソ連共産党74年の歩みは何だったのか、いま改めて孔子の言葉を噛みしめる。

季康子、政ヲ孔子ニ問ウテ曰ワク、モシ無道ヲ殺シテ有道ニ就カバ、如何(いかん)。孔子対(こた)エテ曰(のたま)ワク、子、政ヲ為スニ、焉(なん)ゾ殺ヲ用イン。子、善ヲ欲スレバ、民善ナラン。君子ノ徳ハ風ナリ、小人ノ徳ハ草ナリ。草、之ニ風ヲ上(くわ)ウレバ、必ズ偃(ふ)ス。(顔淵第十二)

 せっかちな殿様の季康子が、道を外れた者を殺して道を守る者達だけにしたらどうでしょうか、と孔子に質問した。孔子は、どうして殺す必要があるのですか。あなた自身が善くなろうとされたら人民は善くなります。君子の徳は風で、小人の徳は草ですから、草は風にあたれば必ずなびきます、と答えた。

 何が無道で、何が有道なのか、その基準を決めるのはなかなか難しい。政治的には、敵対者、批判勢力、或いは己の地位を脅かすかも知れない者迄、無道者として処理してしまうことが歴史的に繰り返された。
 その最も極端な例がソ連で、帝国主義のスパイ、国家の顚覆を図った社会主義の敵、ブルジョワ主義などのレッテルで葬り去った人達は数知れない。中国での事情もよく似ている。
 人類に平和と幸福をもたらす筈であり、そのゆえに多くの人が共鳴した社会主義の実態はまさに『殺』そのものであった。

 孔子はまた『兵』と『食』と『信』にふれて、どれかひとつを取り除くなら『兵』を、『食』と『信』と二者択一を迫られたら『食』を捨てよ、『信』がなければ社会は成り立たないと論語の中に説いている。

 ソ連は『食』つまり民衆生活より『兵』、軍備を優先させてきた。批判勢力の封じ込めと抹殺による一党独裁の恐怖政治は、国民と政府、国民と国民の間の信頼関係、国民の自主性主体性、人間生活に最も重要な思いやりなどの特性を奪ってしまった。
 さあ、ペレストロイカだ、立て直しだと言っても、信頼関係、思いやりを欠いた人間社会では、政治も経済もうまく機能する筈がない。本号114ページの島西氏の政変直前のモスクワは極端なモノ不足、ルーブルの価値低下とドル重視などを伝えている。食糧も絶対量の不足より流通機構の不備、横流し、隠匿などによって消費者の手に渡らなくなっているらしい。

 殺と兵を重視することによって人間生活に最も重要な『信』を失い、『食』の確保すら困難になっているのがソ連の現状である。
 孔子はまた、政は正なり、とも言っている。政治が正しく行われるなら、国民もまた正しく生きてゆく、この理念は昔も今も少しも変わらない。

 ソ連の社会主義体制が崩壊したからといって、我々の体制が絶対だともいえない。昨今の金融、証券の不祥事は、カネまみれの人間社会の醜さを露呈して余すところがない。政財界のトップには、国民や社員をなびかせる君子の徳が何より望まれる。


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プロフィール

増田周作

Author:増田周作
(株)日新出版 創業者
月刊「特装車」「特装車とトレーラ」「NewTRUCK」編集発行人
「東京トラックショー」創立・主催者

大正15年8月30日生まれ 土佐出身
(H23年すい臓ガン、翌年肝臓ガン発病)
平成24年11月21日 肝不全で死去
       享年87歳

旧制中学1年1学期、上級生とのケンカで先方2名と共に退学処分。
15歳で安岡正篤先生門下に入る。
大阪商科大学(現・大阪市立大学経済学部)卒業。土木従事、新聞社を脱サラ後、広告代理店経営。昭和44年43歳、東京でトラックの月刊誌発行を始める。
湯島聖堂「斯文会」名誉会員・後援会常任委員を務める。
「呉越会」「東京トラックショー」「増田周作のおはようコラム」「日新論語会」など、常に社会の木鐸(ぼくたく)でありたいと願った“いごっそう”であった。
伊与田覚学監は10歳年上の叔父。

【 これがほんとうのあとがき。43年のもの書きの、最後の後書になった。われながらよく書き続けたものだと思う。
「生涯現役」。もの書きとして生涯現役を貫いた喜び、これに勝るものはない。読者の皆様に最後の「わだち」をお送りしてお別れをしたい。今、私は至福の感をもって最後のわだちを書いている。
 みなさん さようなら  11月13日 】
絶筆 H24年/12月号
「わだち=月刊 NewTRUCK 編集後記」

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